牛のケトーシスの定義
乳牛の職業病とも言える疾患で、「獣医内科学 大動物編」によると「生体内にケトン体が異常に蓄積し、臨床症状を呈した病態」と定義されている。ケトン体とは、牛の体内で生成されるアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトン等の総称である。
牛のケトーシスの分類
「牛の臨床 第三版」では、ケトーシスは以下のように分類されている。
臨床所見による分類
○臨床型ケトーシス
○潜在性ケトーシス
原因による分類
上記の様に、臨床症状の有無の2分類と、ケトーシスの原因による3分類がなされている。
牛のケトーシスの原因
Ⅰ型ケトーシスは、分娩後のエネルギー不足が原因で起こる。分娩後3〜6周目の泌乳ピークに起こりやすい。慢性的な低血糖と低インスリンを主症状とする。人のⅠ型糖尿病に類似するので、Ⅰ型ケトーシスと呼ばれる。プロピレングリコールの給与や点滴治療に反応しやすく、予後は良い。
Ⅱ型ケトーシスは、前の記事でも挙げたが、乾乳期に食欲が低下し、低エネルギー状態となることが引き金となる。低エネルギー状態により体脂肪が動員され、脂肪肝となることが原因で起こる。(参照https://www.damevet-4-6.com/乳牛と脂肪肝とケトーシス/)。分娩後1〜2週目に起こりやすい。肝機能の低下により、糖新生が進まなかったり、インスリンへの感受性が低下する。第四胃変位や感染症を併発しやすいので、予後はあまり良くない。人のⅡ型糖尿病に類似するので、Ⅱ型ケトーシスと呼ばれる。
食餌性ケトーシスは、変敗して酪酸を多く含んだサイレージの給与が原因で起こる。サイレージ調整が上手くいかないと乳酸発酵が進まず、クロストリジウム属菌が増殖し、ブドウ糖や乳酸から酪酸を大量に生成してしまう。酪酸を大量に摂取した牛の体内では、ルーメンで代謝しきれなかった酪酸が、血中でβヒドロキシ酪酸に変化する。治療と飼料の変更により、予後は良い。
牛のケトーシスの症状
臨床型ケトーシスの症状
①活力と食欲の低下(配合飼料よりも粗飼料好む)
②泌乳量低下
③神経症状
④体表、呼気などのアセトン臭
潜在性ケトーシス
①目に見える臨床症状はない
②泌乳量の低下(1〜4ℓ/日)
③繁殖成績の低下
④感染症に罹患し易くなる
食餌性ケトーシス
①食欲低下
②泌乳量低下
③軟便、未消化便
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