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鈍性発情 | 乳牛の病気について

鈍性発情

「牛の繁殖障害」の診療に行くと、多くの場合が畜主や従業員さんが発情兆候を見つけられなかった牛を診療することになる。牛が発情兆候を見せにくいのは、最近の乳牛が発情兆候を示しにくくなった、あるいは発情兆候を示す時間が短かくなってきたためである。

 ただ、分娩後の初回、第二回、第三回排卵時における鈍性発情の発現率はそれぞれ、77%、55%、35%程度であり、第三回排卵時以降に鈍性発情を示す場合を病的な鈍性発情とするべきともいわれている。1) 

 乳牛の分娩後の卵巣周期開始時期は、平均で24日といわれており、発情周期21日を足すと45日は発情兆候が見られなくとも、鈍性発情とはいえず、分娩後45日未満の牛は共済の病傷保険給付対象とならない。

症状

 卵胞の発育、成熟、排卵、黄体の形成および退行は正常で、卵巣周期も正常なのに、卵胞の発育・成熟期に発情が発現しない状態といわれている。1)         つまり、外部の発情兆候が見られない、あるいは見つからないほど外部の発情兆候が弱い状態である。   

原因

 こうした状況の背景には、近年の乳牛が非常に高泌乳化していることが挙げられる。高泌乳化が進むと発情兆候を示しにくくなる原因としては、泌乳量の増加に伴い採食量が増えたため肝臓の代謝機能が亢進することに起因するといわれている。肝臓の代謝機能が亢進した高泌乳牛では、卵巣から分泌される性ステロイドホルモン(エストロジェン、プロジェステロン)が肝臓で代謝されるため、血中の性ステロイドホルモン濃度が低くなり、発情兆候が弱くなるためであるといわれている。2)

診断

 直腸検査あるいは超音波検査にて、卵巣周期の有無を確認し、追跡、発情発現の有無と照らし合わせて診断する。獣医師は、超音波検査で黄体や卵胞の大きさ、数および子宮の状態から発情周期を推察して、農家さんに伝えることが重要になってくる。

治療

 排卵後5日以降の黄体期にPGFを投与して、黄体を退行させ、発情を誘起する(発情の同期化)。1頭あたりジノプロストとして15〜25mgを1回筋肉内投与する。プロナルゴンF、パナセラン・Hiだと3〜5mL、プロナルゴンezだと1.2〜2mLが投与量となっている。ただ、PGFを投与する排卵後の日数により、授精適期が異なる。外部兆候の発現が見えにくい状態では、PGFを投与しても農家さんが発情を見つけられない可能性があるため、PGFを投与してから何日目に人工授精するのかを示すことで受胎率を上げられる。上野3)は、黄体と卵胞、子宮内膜の状態により、排卵後日数を推察できると報告しており、PGFの投与時期を決めるのに非常に有効である。当方は上野氏の方法を参考にしながら、卵胞ウェーブが2ウェーブであると仮定し、排卵後13〜17日にPGFを投与することで、投与日に3日を足した日付に発情が見られなくても人工授精師さんを呼ぶように農家さんに伝えてくる。

 卵胞ウェーブが2ウェーブであると仮定した場合、排卵後13〜17日の卵巣には、20mm以上の機能性黄体と10mm以上の卵胞が2個ある場合が多く、子宮内膜の浮腫は見られない。

 

 

 

 

 

 

 

 

1) 獣医繁殖学 第三版 文永堂出版

2) 今井敬. 乳牛の繁殖性低下の現状と繁殖技術による受胎性向上. 日本胚移植学雑誌. 第 38 号 3 巻 162-168.

3) 上野大作. 超音波検査を用いた牛の発情周期のステージ推測、Journal of livestock medicine 70 (1), 5-15, 2023-01

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