牛の発情について①

 牛の診療では、毎日のように牛の繁殖障害を治療して欲しいという往診依頼がくる。

 最初ほんとうに何も知らなかった僕は、最初の往診随行で、直腸検査を行い、卵巣に黄体があったらPG(プロスタグランジン製剤)を使用し、黄体が無ければコンセラール(GnRH製剤)かhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン製剤)を使用すると教わった。

 今考えてもこの治療方法は間違ってはいないと思うが、今にして思えば繁殖障害や発情の知識についてもっと理解があり、超音波検査ができればさらに的確な治療をできたのではないかと思う。

 牛の繁殖の知識は農家さんの経営に直結する非常に重要な話であり、普段僕も重視している。牛の発情や繁殖障害について、僕が普段の日常で感じたり、学んだことをしばらく書いていきたい。

 乳牛は子牛を産むことで牛乳を出し、和牛等の繁殖雌牛は子牛を産み、販売することで農家さんの収益となる。酪農家さんも繁殖農家さんも牛がお産をしなければ、経営が成り立たない。畜産業を行う方にとっては至極当たり前のことだが、恥ずかしながら僕は産業動物獣医師になってからはじめて学んだ。

 ではどうやって、牛を妊娠させるのか? - ほぼすべての牛が、人工授精や受精卵移植による種付けである(99.5%以上)。

 牛にとって、獣医師と同等かそれ以上に大切な仕事なのが人工授精師である。酪農家さんや繁殖農家さんは、獣医師がいなくても何とかなるが、人工授精師がいないと経営ができないといっても過言ではない。

 人工授精師の仕事は、農家さんが牛の発情を発見したと連絡が入ることで始まる。これは農家さんの発情発見が牛が受胎するスイッチになるということであり、発情発見がいかに大切かを物語っている。

 発情とは雌の動物が交配のために雄を性的に許容する状態と定義されている。牛の発情は一年中一定周期でおとずれる。1発情周期の長さは経産牛でおよそ18~24日(平均21日)、未経産牛で17~23日(平均20日)といわれている。高泌乳牛や低栄養条件では、発情周期が延長する傾向がある。

                                          (続く)

 

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